Zendeskから2026年9月の新機能・変更点が公開されました。今月は、エージェントの日常操作からAIエージェント、Copilot、外部ナレッジ、アクションフロー、セキュリティまで、幅広い領域に更新が入っています。
この記事では、すべての変更を列挙するのではなく、Zendeskの管理者や運用担当者が優先して確認したい項目を7つに整理してお伝えします。
2026年9月10日時点の情報です。機能の提供状況は、契約プラン、アドオン、アカウント、言語、段階的なロールアウトによって異なる場合があります。実際に利用する際は、管理センターとZendesk公式情報をご確認ください。
9月の主な変更点
- チャットとメッセージングでもAIによるリアルタイム翻訳を利用できるようになった
- AIエージェントの複製、営業時間、メール返信表現など、本番運用に必要な管理機能が強化された
- Copilotの類似チケット検索やマージ提案が利用しやすくなった
- SalesforceとHubSpotを外部ナレッジとして接続でき、Webクローラーの制御も細かくなった
- アクションフローの接続先が増え、接続管理とクレジットの考え方が整理された
- API管理の権限委任、アクセスログ連携、墨消し候補など、セキュリティ管理が強化された
- Zendesk QAとカスタムオブジェクトに、品質管理やデータ管理を広げる変更が入った
1. エージェントの日常操作が改善
チャットとメッセージングでもAI翻訳が利用可能に
チケットのAI翻訳が、ライブチャットとメッセージングにも拡大されました。これまでは主にメール、Webフォーム、APIから作成されたチケットが対象でしたが、会話中のメッセージをリアルタイムに翻訳できる範囲が広がります。
多言語対応の担当者を常時配置できないチームでは、一次対応を共通の運用へ寄せやすくなります。ただし、製品名、契約条件、障害情報、法務表現などは翻訳結果だけで判断せず、用語集や定型文と組み合わせて確認するのが安全です。
コメント単位のリンクを共有可能に
チケット全体だけでなく、特定のコメントへ直接移動できるリンクを共有できるようになりました。長いやりとりの中から、管理者や別担当者に確認してほしい返信を示しやすくなります。
社内チャットやナレッジにリンクを貼る場合は、リンク先のチケットを閲覧できる権限が必要です。また、外部共有用URLではないため、カスタマーへそのまま送らないよう運用ルールを決めておきます。
音声コメントと通知機能も追加
メッセージングまたはメールチケットで、録音した音声をコメントとして送信できる機能も追加されました。管理者は利用可否を制御でき、エージェントは録音内容を確認してから送信できます。
文章より説明しやすい場面がある一方、録音内容の確認、個人情報、アクセシビリティ、検索性、保存期間などのルールが必要です。初期状態で有効になる場合があるため、使用しない組織でも設定状況を確認しておくと安心です。
そのほか、通知リストではメールチケットや再オープンされたチケットの通知を追加でき、メッセージングを含むビューでは最終更新時刻や会話中であることが分かりやすくなりました。オムニチャネルルーティングの統合エージェントステータスは、不要なステータスを隠したり、並べ替えたりできます。
2. AIエージェントを本番運用しやすくする管理機能
AIエージェントを設定ごと複製
AIエージェントの複製では、手順やアクションだけでなく、ナレッジソース、検索ルール、セグメント、パーソナライゼーションなどを含めてコピーできるようになりました。サンドボックスから本番環境、またはサンドボックス間で、設定一式を移しやすくなります。
ゼロから同じ設定を作り直す手間を減らせますが、複製後は接続先、ブランド、公開範囲、営業時間、エスカレーション先を本番環境に合わせて確認する必要があります。複製できることと、そのまま安全に公開できることは分けて考えます。
管理センターのスケジュールをAIエージェントに適用
管理センターで設定した営業時間、タイムゾーン、休日をAIエージェントへ適用できるようになりました。営業時間内と時間外でエスカレーションの動作を変えるなど、有人対応の体制とAIの振る舞いを合わせやすくなります。
特に、AIが回答できないときに有人対応へ切り替える運用では、営業時間外の案内と次回対応時刻を確認します。複数ブランドや海外拠点がある場合は、どのスケジュールをどのAIエージェントへ適用するかを整理しておきます。
メール返信の冒頭・結びを固定可能に
AIエージェントが作成するメール返信に、固定の冒頭文と結びの文を設定できるようになりました。生成AIに毎回挨拶を考えさせず、会社名や窓口名を含む定型表現を統一できます。
固定文を長くしすぎると、回答本文と重複したり、問い合わせ内容に合わない挨拶になったりします。短い挨拶と署名に絞り、テスト用メールで本文とのつながりを確認するのがおすすめです。
このほか、AIエージェントの回答に使われた参照元を別表示で確認できる機能や、解決数ダッシュボードのブランド・階層フィルター、エクスポート機能も追加されています。
3. Copilotの提案と検証が強化
マージ候補を見つけやすく
同じ問題について作成された可能性があるチケットをCopilotが提案する「マージ提案」が、Zendesk SuiteまたはSupportのProfessionalプラン以上で利用できるようになりました。
複数チャネルから同じ問い合わせが届く環境では、重複対応を減らす助けになります。ただし、別のカスタマーや別契約のチケットを誤ってマージすると元に戻せないため、依頼者、組織、件名、会話内容を確認してから操作します。
類似チケット検索が意味も考慮
類似チケットの検索は、キーワードだけでなく文章の意味を考慮するハイブリッド検索になりました。言い回しが異なる過去の解決例も見つけやすくなり、すべての言語とチャネルが対象と案内されています。
過去のチケットを参照する場合は、古い手順、例外的な補償、個人情報を含む回答をそのまま流用しないことが重要です。類似チケットは完成した回答ではなく、判断材料として扱います。
サンドボックスと本番環境で設定を比較
Agent Copilotとインテリジェントトリアージでは、AI設定のバージョンを確認・保存し、サンドボックスと本番環境の差分を比較してデプロイできるようになりました。変更内容を把握してから反映できるため、AI設定のリリース管理を行いやすくなります。
導入時は、変更理由、検証用チケット、確認者、反映日、切り戻し方法を記録します。画面上の差分確認だけでなく、代表的な問い合わせで提案内容が意図どおり変わったかもテストします。
4. 外部ナレッジとWebクローラーが拡張
SalesforceとHubSpotをナレッジソースに追加
SalesforceとHubSpotを、Zendeskの外部ナレッジソースとして接続できるようになりました。接続したコンテンツは、AIエージェント、Copilot、検索、生成AI検索など、外部コンテンツを利用する機能で活用できます。
すでにCRM側で製品資料や社内手順を管理している組織では、Zendeskへ同じ内容を二重登録せずに利用できる可能性があります。一方、接続前には次の点を確認します。
- どのコンテンツをZendeskから参照させるか
- 閲覧権限と公開範囲が適切か
- 同じ内容が複数のナレッジソースに存在しないか
- 更新責任者と更新頻度が決まっているか
- 個人情報や社内限定情報が含まれていないか
Webクローラーの対象と更新頻度を細かく制御
Webクローラーでは、開始URLを最大500件まで設定でき、複数ドメインを対象にできます。更新スケジュールのカスタマイズに加え、含めるURLと除外するURLのルールも最大500件まで設定できるようになりました。
大規模なWebサイトをナレッジとして利用しやすくなる一方、クロール範囲を広げるほど、古いページ、キャンペーンページ、重複ページなどが回答に混ざる可能性があります。最初から全サイトを対象にせず、正確性を管理できる製品サポート領域から始めるのが安全です。
5. アクションフローと外部接続を管理しやすく
アクションフローでは、Zendesk標準アクションとZendeskが提供する外部アクションが、アクションクレジットを消費しない扱いになりました。クレジットを消費するのは、サードパーティのコネクタやカスタムアクションです。
どの処理がクレジット対象になるかを把握しやすくなりますが、フロー内の繰り返しや再試行によって実行回数が増える点には注意が必要です。導入前に、1件のチケットで何回アクションが動くかを見積もります。
また、管理センターに「接続」画面が追加され、アクションフローで利用する外部接続を一元管理できるようになりました。コネクタは50種類以上に拡大し、ClickUp、Magento 2のコネクタも追加されています。
MCPクライアントも一般提供となり、公開または非公開のMCPサーバーをアクションフローへ接続できます。MCPは接続先のツールを増やせる仕組みですが、接続可能だからといってすべてをAIへ許可するべきではありません。読み取りと更新の権限を分け、利用できる操作、認証情報の管理者、実行ログ、失敗時の対応を決めます。
6. API・アクセスログ・データ保護の管理を強化
Enterpriseプランのカスタムロールに「APIを管理」権限が追加されました。管理者権限をすべて渡さなくても、Zendesk APIトークン、OAuthクライアント、Conversations APIの資格情報を管理する担当者を指定できます。
8月のアップデートで案内されたAPIトークン廃止への対応でも、誰が認証情報を管理するかが重要です。権限を委任する場合は、発行、保管、更新、失効、利用状況の確認までを役割として定義します。
Advanced Data Privacy and Protection(ADPP)では、アクセスログをWebhookでSIEMなどへ送信する機能と、正規表現を使った独自の墨消し候補が追加されました。セキュリティ監視や、自社固有の会員番号・注文番号などを検出する運用に活用できます。
このほか、チームメンバーのセッション上限が12時間となり、パスワードポリシーの変更も進められています。SSOを利用している場合も含め、長時間勤務や共有端末、セッション切れ後の再認証への影響を確認します。
7. Zendesk QAとデータ管理にも新機能
Zendesk QAでは、エージェントだけでなくレビュー担当者の評価を自動的に割り当て、結果をダッシュボードで確認できるようになりました。レビュー対象をランダムに割り当てることで、採点の厳しさやフィードバック品質の偏りを見つけやすくなります。
品質管理では、担当者の点数だけでなく、評価する側の基準が揃っているかも重要です。レビュアー別の傾向を確認し、キャリブレーションやスコアカードの見直しにつなげます。Zendesk QAの全体像は、Zendesk QA(品質管理)の機能でも解説しています。
データ管理では、一つのチケットに複数の関連レコードを紐付けられる複数参照関係フィールドが追加されました。ユーザー、組織、アセット、カスタムオブジェクトなど、問い合わせに関係する複数の対象を表現できます。
さらに、管理者CopilotのAIオブジェクトビルダーが一般提供となり、自然言語からカスタムオブジェクトの下書きを作りやすくなりました。AIが作った構造はそのまま採用せず、既存フィールドとの重複、データ型、必須項目、レコード権限、運用担当者を確認してから利用します。
その他の対象製品別の変更
今回のアップデートには、次のような変更も含まれています。
- Web Widgetで、選択したブランドの過去の会話だけを表示する機能
- WhatsApp Business Scoped User ID(BSUID)への対応
- 管理者Copilotによるメッセージングトリガの下書き作成
- コンタクトセンターのエージェントファーストコールバック
- 通話の会話ログとAI要約を折りたたみ可能なコメントとして保存する機能
- 検索結果へのカスタムフィールド列とフィルターの追加
- OAuthクライアントのスコープ細分化
- ライトエージェントと閲覧担当者に対するカスタムオブジェクトレコード権限
- 従業員サービス向けのカスタムタスク、リスト、アセットフィールド
利用しているチャネルや製品に応じて、対象条件、提供時期、初期状態、設定変更の有無を個別に確認してください。
運用担当者向けチェックリスト
すぐに確認すること
- 音声コメントなど、初期状態で有効になる可能性がある機能を確認する
- セッション上限変更が、長時間対応や共有端末へ影響しないか確認する
- API認証情報を管理する担当者と権限を整理する
- 新しい通知項目を誰が利用するか決める
AIエージェント・Copilotで確認すること
- AIエージェントに適用する営業時間と休日を確認する
- メール返信の冒頭文と結びの文をテストする
- サンドボックスと本番環境のAI設定差分を記録する
- 類似チケットやマージ提案を採用するときの確認手順を決める
- AIの提案を検証する代表的な問い合わせを用意する
ナレッジ・外部連携で確認すること
- Salesforce、HubSpot、Webサイトのどの情報を参照対象にするか決める
- 重複コンテンツと古いページを除外する
- 外部接続の所有者と認証情報の更新手順を決める
- アクションフローの実行回数とクレジット対象を見積もる
- MCPサーバーへ許可する操作を最小限にする
まとめ
2026年9月のZendeskアップデートは、AI機能の追加だけではなく、AIエージェントを複製・検証・運用する仕組み、外部ナレッジの管理、外部アクションの接続、API権限の委任など、管理面の強化が目立ちます。
新機能を個別に有効化する前に、サンドボックスでの検証、権限、ナレッジの正確性、営業時間、実行ログを確認できる体制を整えることが重要です。特に、AIや外部連携が更新処理を行う場合は、できることを増やすより先に、どこまで許可するかを決めます。
KIRIKOMIでは、Zendeskの設定・運用改善、AIエージェントの設計・実装、外部システム連携を、実際の業務フローに合わせて整理・実装しています。
